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論文
Yo Ota 実験映画作家:太田 曜
作品|5400Secondes

■5400Secondes
1986年/16ミリ/カラー/サイレント/10分
協力(美術家):新庄茂扶
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 パリ在住の美術家新庄茂扶氏が行なったパリでの個展、そのオープニングで私の作品を上映すると云う話になった。それならば、何か共同で出来るような作品を考えたいと思って制作したのが『5400Secondes』だった。5400秒ということは90分、新庄氏が映画の中で制作している作品を作るのに要した時間だ。最も90分は、実際の作業の時間で、紙を墨に浸けている間の時間等は入っていないのだが・・・。

 約10分の映画の中に、ワンカット・ワンシーンでこの90分を収める為には基本的にコマ速を落とさなくてはならない。しかし、単にコマ落としにしただけでは映画的な展開にはならない。まして、ワンカット・ワンシーン、カメラは手許からズ−ムバックして、顔の表情をとらえたり、そのまま作品制作の全貌を見せる為にアトリエの中一杯を見せたり、そして叉手許や、顔や、あらゆるディテールに迫る、カメラを一度もカットすること無く。ハイスピ−ドから、ノ−マルスピ−ド、そしてコマ落としと撮影のコマ速を断続的に変化させながら(並行して絞りを変えて露出を一定に保ちつつ)カメラはその時々の美術家の作業の様子を追う為パン、ズ−ム、をくり返す。

 新庄氏の作品が、行なった作業の蓄積された時間を見るようなものであったとすれば、その作品制作の記録でもあるこの映画は、その時間がどのように蓄積されたかを見る作品なのかもしれない。

 当時利用していたパリ郊外モトル−ユの現像所のタイミング担当者から、ワンカット・ワンシーンで断続的にコマ速が変るという映画は初めて見たと言われ、ちょっと嬉しかった。モントル−ユはその昔、ジョルジュ・メリエスが世界で最初の本格的な映画スタジオを作った所でもあるから、尚更だったのかもしれない。


作品|5400Secondes
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